つづく日々を奏でる人へ

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人生初ゼルダ日誌⑵ 炎の料理人スペシャル

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こんばんは土井善晴です。

今日はね、『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』でたまご焼きを作っていきますよ〜。

 

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まずは道具。ゴブリン達の鍋を使わせてもらいます。調理の邪魔になるので周囲のゴブリンはあらかた処理しておきますよ〜。

 

材料は卵オンリー。

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鍋の前でAボタンを押すだけであっという間に


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たまご焼きが出来てしまいましたよ〜。

どういう理屈か卵以外の食材も加わってますが、それもまた料理の持つ不思議な力なのかもしれないですね。以上、土井善晴でした。

 

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そんなわけで『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』プレイ日誌の続きです。

前回、フードのおじいさんに「全ての祠を攻略しないとパラセールあげないんだからね」と無理難題を突き付けられたリンク。

途方に暮れてこうして現実逃避がてら料理に勤しんでいます。

 

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暗中模索の中で生まれたグロテスクな何か。

まさか任天堂ゲームでこんなハッキリとしたモザイクを見ることになるとは思わなんだ…

 

ちなみにこの先は寒冷地なので、通常装備のリンク君がそのまま突入すると徐々に体力を削られていってしまうのですがf:id:Nonnwitter:20190915181721j:imagef:id:Nonnwitter:20190915181748j:image

近辺で拾った唐辛子的ななにかを焼くと身体をあたためるレッドホットな料理が出来上がるという寸法です。凄い。楽しい。

 

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様子を見にきた局アナも思わず咽せる辛さです。

 

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攻略中の祠で手に入れたアイテム。

「リモコンバクダンってあれだ…スマブラでよく見るやつだ!相手が復帰阻止で使ってくるやつだ!」と進研ゼミよろしく見覚えのあるアイテムに興奮していたら

 

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えげつない勢いで爆風に巻き込まれました。

どう見てもスマブラの数倍の規模で爆発しとる。威力もエグい。


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本当にあれお馴染みのリモコンバクダン?ビッグバンみたいになってない?

 

ちなみにゴブリン達の住処には見るからに怪しいドクロマークの樽が置かれていることも多いのですが、

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そこに大岩などを落として衝撃を与えると軽く爆発事故レベルで燃え盛ります。一網打尽。


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無邪気に踊るゴブリン達の住処を襲撃した挙句、彼らの楽しみにしていたディナーを強奪するリンク君。こいつこそ厄災では?


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先ほどのビッグバンと組み合わせれば、太陽系誕生の瞬間さながらの輝きと爆風がリンク君の身体を包みます。


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そしてこのやりきった顔。良かったね。

 

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どうせなので遠方に見えるゴブリン一家にもこの感動をおすそ分けしたい。発見と冒険はいつだってみんなと共有するものです。


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よいしょよいしょ


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そいっ!


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着火っ!!!


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巣を訪れたものの既にゴブリン一家はどこかにお引越しをしたようで、感想を聞くことは叶いませんでした。よほど急な要件だったのか、現場に残された角や武器が哀愁を誘います。

 

そんなこんなで本編1、道草9の割合で祠を攻略していくと再びどこからともなくフードのおじいさんが登場。

「四つの祠を攻略した君に真実を伝えよう」と言い残し、"祠の交わる場所"へと旅立ってしまいます。

祠の交わる場所…というのは文字通り、これまで攻略した祠を地図上で結んだ先にある神殿跡です。こういう要所要所にプチ謎解きみたいなの挟んでくるのたまらんですね。わくわくする…

 

そして神殿跡の上部でおじいさんが語る真実。

ハイラル王国で百年前に起きた厄災とは、魔王ガノン王国の防衛機構を全て乗っ取ったために起こされた悲劇でした。ガノンを討ち亡ぼすべく設置された神獣やガーディアンが、そのまま王国に牙を剥く…。

考え得る最悪の事態にハイラルは成すすべもなく蹂躙され、残されたのは荒れ果てた大地と文明の名残のみ…。

 

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遥か遠くで禍々しいオーラを放ち続けるハイラル城。

あそこには今も厄災ガノンの残滓と、それを百年間抑え続けるゼルダ姫がいるそうです。姫の力が尽き、ガノンの力が解き放たれた時こそ、世界は真の意味で"終わり"を迎える。

そしてリンクは百年前の大戦で最後までゼルダ姫の側に支え続けた忠実な剣士。彼は回生の祠で百年間眠り続け、姫の言葉によって今ようやく、目覚めの時を迎えたのでした。

 

いやー良いね…最後まで姫を守り続けてたのがリンク君なの良いよね…絶対的な勇者というか、「救うべくして世界を救う存在」という感じでとても燃える…。


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ちなみにフードのおじいさんの正体は、なんと百年前に亡くなったハイラル王国の君主様。

無念のうちに命尽きたハイラル王は霊体となり、娘ゼルダのその後と、王国を救う勇者の目覚めを待ち続けていたのでした。なんと健気な…。

 

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短い間ではありましたが、旅の始まりから今に至るまで、ハイラル王と交わした微笑ましい触れ合いの数々が胸に去来します。

 

そんなこんなでハイラル王から念願のパラセールを受け取ったリンク君!果たして陸の孤島を抜け出し、双子山の向こうにいるという「協力者」に会うことが出来るのか!そしてその協力者にお手製のバクダンは効くのか!待ってろ協力者!次回に続く!

 

 

 

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どーも協力者さん、知ってるでしょう?

勇者リンクでございます。

 

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おいバクダン食わねえか

 

人生初ゼルダ日誌⑴ 木登りと放火と、時々奇襲

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ひぇ〜〜〜〜〜グラフィックの暴力〜〜〜

 

そんなわけで前々から気になっていた『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』をやっとこさ手に入れたので、のんびりプレイ日誌的な何かを書いていこうと思います。

題にあるように自分は本作が人生初ゼルダになります。何卒。

 

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さて、物語は直接脳に語りかけてくる何者かの導きによってリンク君が神殿奥深くで目を覚ますところから始まります。

ゼルダは作品ごとに設定が変わる(?)みたいなことは聞いたことあるんですけど、今作のこれはどういうことなんでしょうね。来たる厄災ガノンの脅威に備えて百年間コールドスリープされてたとか?直接脳に語りかけてくるのはゼルダ姫なのかしら。

 

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そんでこの神殿抜けた先に見える世界の雄大なこと雄大なこと。綺麗だね…この作品、見えるところどこまででも行けるって聞いたことあるよ…ワクワク…。

 

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ワクワクした拍子に崖から飛んだら死にました。儚い。落下ダメージある系のゲームなのね…

 

気を取り直して辺りを散策するんですが、もう目に入るもの全てが新鮮で、おまけに行動の自由度が高いので一向に先に進まないんですよね。

プレイされた方が口を揃えて「本編が進まない」的なこと仰ってるの見て「またまた〜僕はゼノブレ2ですらほとんど道草せずにストーリーのクリア優先した人だよ〜?」とか調子こいてたら見事にやられました。アイテム画面でリンクがリンゴ5個抱えてる姿見てるだけで楽しい。

 

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あと木登りが楽しい。

登頂まであと少しなのにスタミナが枯渇して、「もっと効率のいい登り方があるのでは…」とか工夫してるだけで余裕で30分くらい潰れる。

 

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ひたすら木登ってたら業を煮やした直接脳内お姉さんに怒られました。ごめんなさい。

 

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いやもうちょい……もうちょいで登頂できるはずだから……もうちょい待って…

 

もうちょい…もうちょい……

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………………………

………………

………

 

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ご覧くださいこの絶景を。

ハイラル王国の全てを見渡せんばかりに広がるこの雄大なパノラマ。美しい。ここに至るまでに費やした30分以上の時間も報われるというものです。脳内直接お姉さん見てますか。僕やりましたよ。


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リンク君も心なしか嬉しそう。絶妙なドヤ顔が腹立たしいです。

 

一通り木登りを満喫したので、先に先にと進んでいくとゴブリン(?)的な種族に遭遇。とりあえず木の枝を武器に応戦しますが、いかんせん数が多いので撤退。

あの人達、容赦なく同時に襲いかかってくるから怖い…パニクる…あと敵遭遇時に流れるBGM、曲調は軽いのに何故だか無性に焦る…。

 

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引き返した先で出会ったのは、フードを被った謎のおじいさん。何やら旅の助言を下さるありがたいお方で、ハイラル王国の歴史についても詳しいそうです。斧やらリンゴもくれるし、底なしに良い人だ…。

 

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良い人だけどとりあえず火を付けてみます。流石に燃えなかった。二重の意味で煙たがられました。

 

どうやらこの松明や焚き火を使うことで散策中に手に入れた食料をより美味しく、よりジューシーに仕上げることが出来るそうです。木になるリンゴは勿論のこと、そこらに生えてるキノコなんかもその対象。あんまり焼きすぎるとモンハンの肉よろしく焦げます。自由度が高い!凄い!

 

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自由度の高さが仇となり自分が丸焦げになる図。上手に焼けました。

心なしかフードのおじいさんも「わしを焼こうとした天罰じゃよ」と笑っているように見えます。ごめんなさい。

 

このように火ひとつ取ってみても自由度がえげつないので、拾ったものもついつい火に焚べたくなったりします。あれもこれも大抵焼ける。こりゃ本編進まないわ…納得…。

トカゲを捕まえたので焼いて食べられないかしらと置いてみたら、これ幸いとばかりに逃げられました。今まで生きたままポーチに入れとったんかい。

 

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なんとそこら中に生えてる草ひとつひとつにも火を付けられるので、気付けば草むらがひじきみたいなビジュアルになってました。凄い。

 

とりあえず指定された場所に向かうまでもう少し辺りを見て回ると、聖堂のようなものを発見。フードのおじいさんの話ではこのあたり一帯はかつての面影だけが残る「忘れられた地」だそうで、言われてみると確かにハイラルの各所に文明の名残のようなものが点在しています。

どうやら百年前の厄災が原因で徐々に文明は衰退していったとか。

 

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とりあえず聖堂のてっぺんまで登ると、冒頭の木登りでも拝めなかったハイラルの全景が広がります。これだけ広大な土地なのに、今ここには魔物以外誰も住んでいないのかと思うと、この美しさもどこか物悲しいものとして映ります。

 

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リンク君も神妙なドヤ顔を浮かべます。

 

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散策の先に見つけた謎の橋。

むちゃくちゃ向こう行きたい。

ただ残念ながら、今リンク君がいる場所は高くそびえる陸の孤島だそうで、橋のあるところまで降りようにも現状その手段がないようです。

 

その後も古代の遺物らしき監視メカに襲われたり、スライム的な敵に襲われたり、ゴブリンに逆襲しようと弓を構えるも矢が装填されてないことに気付かずしばらく弓をびよんびよんさせたりと紆余曲折ありましたが、ようやく本命の目的地へ。

 

シーカーストーンの指し示す地へ向かいます。

 

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ヒェエッ………

 

なんだか怪しげな機械にシーカーストーンを置くと地響きと共に謎のタワーが。と同時に、これからで行けるであろう世界のあちこちでも同種の塔がせり出てきました。どうやら行く先々にそびえるこの塔が旅の目的地となるようです。

 

塔の出現におったまげてると、例のフードのおじいさんがパラセールでどこからともなく登場。

祠の地下に眠る試練を乗り越えた暁にはこのパラセールをあげてもいい、と提案してきます。これで先ほど行けなかった魅力的な橋にも向かえるはず!ありがとうおじいさん!さっきは火付けてごめんなさい!

 

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とりあえずおじいさんの言う通りに地下に進むとそこはゼルダ初心者の自分が夢にまで見た、所謂ゼルダ的なダンジョン」

謎解き…というにはまだシンプルですが、磁力を操る不思議なアイテムと共に神秘的な迷路を先に進んでいきます。どうやらここの主はダンジョンを突破できる真の勇者を待ち続け、このような知力と勇気を試す仕掛けを張り巡らせたようです。

 

最奥で鎮座するミイラ的な主。

彼はリンクがここまで到達したことを心から喜び、百年ぶりとなる勇者の覚醒を祝しながら天に召されていきました。

試練の先にある秘宝を手にし、無事フードのおじいさんのもとへ帰還するリンク。これで移動手段を大きく広げられるパラセールを入手できます。

 

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「ふぉっふぉっふぉ。今お主が突破したであろう祠はこの世界のあちこちにある。それらを全て乗り越えた暁にこのパラセールをやろう」

 

「いやなに、気が変わったんじゃよ。分かったら早う行かんかい。ふっぉっふぉ」

 

 

……………

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話が

 

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違うやろがいッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!

 

 

さてフードのおじいさんから無理難題の地獄案件を押し付けられてしまったリンク!果たして彼のいく先に希望はあるのか!もうこのまま勇者の役割も放棄して一生木登りと放火だけしてれば良いんじゃないだろうか!どうなるリンク!

 

次回に続く!

のだろうか

祖母を亡くした話

先日、母方の祖母が亡くなりました。

享年九十三歳でした。

 

私と祖母の関係は深すぎず浅すぎず、数年に一度会うか会わないかのなんとも言えない関係だったと思います。物心ついた頃から一緒にいる訳でもなければ、完全に切り離せるほど遠いわけでもない、微妙な距離感。

だからこそ、たまに会う時には屈託のない笑みを浮かべ、会えずにいた時間を埋めるように孫の名を連呼する。そんな、どこにでもいる優しい祖母であったように記憶しています。

 

ただ、母から聞く祖母の人物像は私の記憶にあるそれとはだいぶ違い、頑固で、内向的でーーなにより母との折り合いは悪いようでした。そして聞く限り、その原因は祖母の「娘だけに見せる顔」にあるように思われました。その上で、孫に向ける愛情も、また確かに本物で。

娘に見せる顔も、孫に見せる顔も、どちらも素顔。

昔までただ「優しいおばあちゃん」だったその人は、一方で「母を振り回す人」としていつしか複雑な輪郭を帯びるようになっていきました。

 

祖母がどうやらもうあまり長くはないということを聞いたのは数週間前。私は母と兄の三人で、祖母が入居している介護施設へ向かいました。

数年前から自宅での生活が困難となり、施設を転々としていた祖母はその過程で認知症などを患い、徐々に疲弊していきました。

母は根気強く看病に向かい、私も幾度かお見舞いに行った記憶はありますが、いつからかその間隔も空いていき、最後に私が祖母のもとを訪れたのは少なくとも三年以上前になります。

 

ーー先が長くない。

その言葉から覚悟していた以上に、私の眼前で呼吸する女性はあまりに弱々しく。車椅子の上で、誰とも会話することなく、ただ時が過ぎるのを待つように生きる祖母を見て、私は「先が長くない」という言葉を初めて実感として受け止めました。

まともに会話することは出来ず、耳元でゆっくり話しかけることでようやく三回に一回、対話が成立するかどうか。私と兄のことは辛うじて覚えているものの、どうやら私の方を兄と勘違いしているようでした。

 

なんとなく、その寂しそうな姿を少しでも埋めたくて、思いつきで近くに置いてあった犬のぬいぐるみを抱えさせてあげると、祖母はそれを愛おしそうに撫で続け、時折声をかけていました。私は「幼い娘を抱いていた頃を思い返していたら良いのにな」と、ありもしないと分かっていながら、そんなことを願いました。

 

お別れをする瞬間まで祖母のそれぞれの手は、私と兄が分担で、両手で握り続けました。

痩せ細った手を見られたくない、と洩らし、それに比べて二人の手はしっかりしていて良いねと強く握り返してきたので、大丈夫だよ、おばあちゃんの手もしっかりしているよ、と慰めにもならない言葉をかけてしまいました。

祖母がぽつりぽつり、と「寂しいね」「行かないで」と言うものだから、私も兄もなかなか手を離せず、「さようなら」と「またね」のどちらの言葉をかけるべきかも分からず、嗚咽だけが洩れました。どちらの言葉をかけたかはもう覚えていませんが、流石にそこで「さようなら」を言えるような強さは持てず、「またね」に落ち着いたような気がします。

 

実際、その時はそれが今生の別れだとばかり思っていたのですが、私は一週間後に再び祖母に会いに行くことになります。

今度は「先が長くない」より、遥かに切迫した事態という報告を受け。

 

兄はどうしても都合が付かず、私と母で会いに行った時、祖母は殆ど話すことの出来ない状態にまで追い込まれていました。車椅子から専用のベッドに移され、点滴を足に打ち、視線は定まらず。一週間でこんなにも悪化するものか、と現実味のない光景を、どこか目を背けるように眺め続けました。

 

一週間前と同じように手を握ると、確かに私を認識して、そして、もう一方の手は母に向けて伸ばされました。そんなはずないと分かっていながら、私は「もしかしたら二人の間にわだかまりなんてなかったのかもしれない」と楽観的な希望で胸を満たしました。

そんなはずないけど。それでも、出来ることなら最後は幸せに終わってほしい。乳児を抱えるようにぬいぐるみを愛でる祖母を見たあの時から、そんな妄想めいた幻想に私は取り憑かれていました。

 

祖母の枕元にずっと置かれていた私の幼少期の写真を見せ、そこから「この赤ちゃんがこうなりました」と言わんばかりにひょっこりはんの要領で顔を出すと、祖母は昔と今の私を交互に指差し、どこか嬉しそうに口を綻ばせました。祖母が喜ぶ限り、私は顔を出し続けました。

 

呼吸が乱れ、酸素マスクを付けていなければ危ない状態に追い込まれ、それでも祖母はマスクを着けることを執拗に拒み続けました。どうやら息が苦しいかどうかよりも、得体の知れない何かを装着される煩わしさが勝つようで、職員の方と相談し、祖母の意思を尊重することにしました。

「最後まで、おばあちゃんは頑固なままだね」

「おばあちゃんらしいよ」

恐らく、今まで私の知らないところで「娘だけに見せる顔」を見てきた母が洩らすその感想に、ようやく私はうっすら合点が行きました。

 

どれだけその場にいたかは分かりません。

会話の出来ない祖母に、それでも恐らくこれが最後の機会だからと寄り添い続けていては、きりがない。しばらく経って、せめて最後にもう一度だけと手を握ると、それまで半ば夢の中にいた祖母は目を覚まし、起き上がった拍子に呼吸を大きく乱してしまいました。

咽せたいのに上手く咽せることが出来ず、苦しそうに口元を抑える姿が、結局、私が最後に見た祖母の姿となりました。

少しでも安心して旅立ってもらいたいと握った手が結果的に祖母を苦しめる形に終わってしまったことを、今も静かに後悔しています。ただ、あの場で何も言わず立ち去ることが正解だったのかと言われると、その基準は結局、私のエゴによるもので。

 

今も何が正しかったのか、分からないままです。真に祖母にとって正しい行いが出来た自信など、一切ありません。

 

その三日後の朝方、祖母は亡くなりました。

起床時に、母から訃報を聞きました。

 

そして昨日。私と母は、後述の事情で出張先から動けない兄の無念を背負う形で、火葬場に向かいました。

前日から嫌な予感はしていましたが、その日は台風の影響でダイヤが大幅に乱れ、すし詰めの電車に揺られながら私達は、じわりじわりと先に進みました。

 

運転見合わせのニュースを知った前日の時点で火葬場に掛け合うも、既にスケジュールが確定しており、今からの変更は不可能とのこと。当日も事情を説明するも、結局そのまま儀式は執り行われ、私と母は蒸れた電車の中で何も出来ないまま、遠い場所で行われている祖母の火葬を、ただ思うことしか出来ませんでした。

遺骨を分けてもらおうにも、そこへ向かう山手線は入場規制で入ることすらままならず、私と母は、そうして全てを諦め、喪服のまま自宅へと引き返しました。

「やれるだけのことはやったよ」

「おばあちゃんはいつも自分のこと晴れ女って自称してたけど、最後の最後で、おばあちゃんらしいね」

母の寂しそうな、何かを懐かしむような言葉が、その日一日中、私の胸に焼き付いて離れませんでした。

 

_________

 

 

私は、誰かの死に目に会ったことがありません。

家族も、友人も、それ以外の人も。

目の前で誰かが亡くなり、それが焼けて消えていくさまを見たことのない私にとって「死」とは未だに現実味のない言葉であり、現象です。

今回祖母の死を間近で体感し、それでも最後の一瞬を見ることのなかった私にとって、「死」はこれからも遠い未来の出来事のような気がします。

 

そんなはずないのに。

いずれその日は、今にでも訪れるかもしれないのに。

 

私はこの数年間、漠然とした死に怯え、意識的に健康的な生活を心掛けていたように思います。野菜を多く摂り、酒にも煙草にも一切手を出さない。

それは、今幸せだと感じるこの「生」を少しでも永らえさせるための努力でもありました。絵を描くことを、言葉を紡ぐことを、多くの趣味に時間を捧ぐ喜びと有難みを実感しているからこそ、不意の病気や事故などでそれらを奪われる可能性を少しでも低くしたい。その一心で生きてきました。

 

ただ、あの時、満足に話すことが出来ず、流れ行く日をただ生き続ける祖母の姿を見て、生きるとはなんなのか、よく分からなくなってきました。

長生きすることが、幸せなのか。

同じ老人ホームの住人達と日々を過ごせれば、それで満足なのか。

それまでどれだけ満ち足りた人生を送ろうとも、最後に待ち受ける場所が、ただ漫然と日々を送るだけのものなら。

自分は、幸せに旅立てるのか。

充実した人生とはなんだ。

 

訃報を聞いた日、母が私に呟いた言葉を思い出します。

「おばあちゃんが酸素マスクを頑なに拒んでたの、今思うと"もうこんなもので生き永らえさせなくて良い"って意味だったのかもね」

 

死人に口はなく。真意は分からないままで、ただ本当に煩わしいだけだったのかもしれないけど。

 

どっちだったんだろう。それとも、別の意味があったんだろうか。

 

分からないまま、これから私はずっと生きていくのでしょう。祖母が生きたかったのか、そうでなかったのか分からない世界を。

 

最後に、私は結局黙祷を捧げることも、祖母に何かを伝える機会もなかったので、この場を借りてほんの少しだけ。

 

おばあちゃん。今まで沢山愛してくれてありがとう。これからもずっと、頑張って生きていきますので、どうかそちらから、あたたかく見守っていてください。

 

のんより。